2015年8月 日本の平和と安全保障:10のポイント

ヨハン・ガルトゥング


1.診断:集団的自衛権は不安全への道である

集団的自衛権は、米国による武力紛争さらには容易に戦争に通じる軍備競争に日本を引きずり込む。TPP/ISDは、日本を米国経済の周縁と化し、福祉を削減させ、米国経済の問題に日本を巻き込む。その問題とは、人々への奉仕を犠牲にする債務への奉仕、実体経済の成長よりも金融経済への傾斜、新紙幣の過度の印刷、過度の不平等などである。これらに対するオルタナティブを2~10で述べる。


2.積極的平和:衡平を伴う協力、共感を伴う調和、インスティテューション(制度化)―フュージョン(融合)―トランスミッション(伝搬)。EC6[当初6カ国]のためのような平和の傘


3.消極的平和:脱分極化―紛争解決―トラウマ和解による、暴力・戦争の不在。安全保障の状態としても知られる。EC-EUのような状態。


4.平和のフォーミュラ:4つの仕事


      衡平 × 共感      積極的平和

     ― = 

     トラウマ × 紛争   消極的平和への脅威


5.日本の基本的な仕事:

解決志向、暴力(の脅威)の根本原因(未解決の紛争と未和解のトラウマ)の除去。「○○反対」、否定主義(例:反日右翼/左翼)が多すぎる。超越の発想があまりにも少ない。「どちらをも」の発想における当事者間にある肯定的な部分をつなげることが必要である。日本人は国内では折衷主義が上手であるが、外交においてはそうではない。


6.未解決の紛争と未和解のトラウマを特定する:解決案は表を参照されたい

*日本―中国 *日本―南コリア *東京―沖縄 *日本―ロシア

*日本―台湾 *日本―北コリア *日本―米国


7.紛争を解決する:

直接的または間接的な調停による。3つの基本的な段階がある。

A  マッピング:当事者、目標(ゴール)、コンフリクト=相容れない目標

B 目標の正当性を検証する:法、人権、基本的必要が基準となる

C 正当な目標に合理的に合致する新しい実現可能な現実のビジョン

調停は、最初は一度に1当事者と行い、対話を通して下記の項目を探究する。

*未来/肯定的:当事者たちが望む東アジアとは何か。理想主義。

*過去‐現在/否定的:何が起こっているか、黒か白か。リアリズム。

*過去/肯定的:かつての東アジアに良いことはあったか。何が起こったのか。古き良き時代。

*未来/否定的:東アジアにとって最悪の事態は何か。パラノイア。

日本は、第1の点を軽視し、第4の点を重視する傾向にある。「危機意識」。上記4つのすべての点に導かれるならば、具体的・建設的・創造的な解決案が出現するであろう。


8.EUをモデルとした、東北アジア共同体(NEAC):

2つのチャイナ、2つのコリア、日本、極東ロシアから成り、平等・共感・紛争解決・トラウマ和解に基づく。特別県としての沖縄は、NEACの本部として機能する。NEACはまた、ASEANに倣い、東北アジア諸国連合(ANEAN: Association  of Northeast Asian Nations)と呼ばれてよい。米国/ワシントンとも同様に良い関係を持つ。


9.専守防衛:非挑発的、非攻撃的、短距離

CMD(conventional military defense):通常兵器による海岸線の防衛、MTBs‐PGM、ビーム

PMD(paramilitary defense):準軍事力による領土防衛、ゲリラ・民兵、ジープ‐PGM

NMD(nonviolent military defense):積極的・消極的非暴力、非協力‐市民的不服従

CMD+PMD+NMD:不可侵の日本(スイスのように)。沖縄は特別の地位にある。過渡的軍事であり、兵器が非攻撃的であることを国連が監視する。これは「非武装中立」ではない。防衛のための兵器と日米安保が存在している。世界には26の非武装国―攻撃される対象とはならない国―があり、それらは主に小さな島々である。


10.憲法9条1項を肯定的に読む――すべての国のものとして:外交において、戦争に「ノー」を言うための道具として(武器は厳密に領土の専守防衛に限定される)、そして積極的平和の傘に「イエス」を言うための道具として。この点において、日本は世界のリーダになる可能性を持っている。


https://sites.google.com/a/transcendjapan.net/www/galtung2015aug/table1.jpg?attredirects=0

IFFC(International Fact Finding Commission):国際実情調査委員会、今後の設置が望まれる。

カリフォルニアにおける日本人生徒のいじめ事件は、学校経営者・教師・親・生徒が当事者となる、IFFCがまさに関与すべき問題(McGraw Hill)。

 

■翻訳担当

奥本京子+藤田明史(トランセンド研究会)


■関連資料
”Toward a Northeast Asian Community”, EDITORIAL, Johan Galtung, 24 Aug 2015, TRANSCEND Media Service, https://www.transcend.org/tms/2015/08/toward-a-northeast-asian-community/